賃貸物件の募集時に媒介契約は必要?

不動産オーナーの皆様が賃貸物件を募集する際、「媒介契約は必ず必要なのか」という疑問をお持ちの方は少なくありません。結論から申し上げますと、賃貸物件の募集において媒介契約書の締結は法律上の義務ではありませんが、トラブル防止のためには書面での契約をお勧めしています。本記事では、賃貸物件の媒介契約に関する重要な情報をご説明いたします。

賃貸物件の媒介契約は法的に必要ない

不動産取引において「媒介契約」とは、物件の所有者(オーナー)が不動産会社に対して入居者探しを依頼する際に結ぶ契約のことを指します。賃貸物件の募集に関しては、宅地建物取引業法では媒介契約書の作成・交付が義務付けられていません。これは売買取引とは大きく異なる点です。

宅地建物取引業法第34条の2では、「宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約」についてのみ書面による契約が定められており、賃貸については言及されていません。そのため、賃貸物件の募集依頼は口頭での依頼でも法的には有効であり、多くの不動産会社ではオーナーからの口頭での依頼を受けて募集活動を行っています。

口頭での依頼でも可能な理由

賃貸の媒介契約が口頭でも可能な背景には、「契約自由の原則」があります。この原則は、法律で禁止されている事項や公序良俗に反する内容を除き、契約の種類、条件、期間などは当事者の合意によって自由に設定できるという法律上の基本理念です。

つまり、賃貸物件のオーナーと不動産会社の間で、口頭でも合意が成立すれば媒介契約は有効となります。一般的に、不動産会社はオーナーから物件情報(間取り図や住所等)を聞き取り、募集図面を作成して対応することが多いです。

書面での契約のメリット

法的な義務はないものの、書面で媒介契約を交わすことには以下のようなメリットがあります

  1. 認識違いの防止: 口頭よりも書面に契約内容や募集条件を記載しておくことで、オーナーと不動産会社の間の認識違いを防ぐことができます。

  2. 情報の正確な伝達: 物件情報が間違って伝わることを防ぎ、正確な募集活動が可能になります。

  3. 報酬条件の明確化: 成約時の不動産会社への報酬(仲介手数料・AD)などの条件を明確にできます。

  4. 後々の確認: 契約当時の取り決めを後から確認することができます。

賃貸物件の媒介契約の種類

仮に書面で媒介契約を結ぶ場合、以下の3種類から選ぶことができます

1. 一般媒介契約
複数の不動産会社に同時に依頼できる契約形態です。オーナー自身が入居者を見つけることも可能です。不動産会社からの定期的な報告義務やレインズ(不動産流通機構)への登録義務はありません。

2. 専任媒介契約
一社のみに依頼する契約形態です。オーナー自身が入居者を見つけることは可能です。不動産会社には2週間に1回以上の頻度で募集活動の報告義務があります。

3. 専属専任媒介契約
一社のみに依頼し、オーナー自身が入居者を見つけた場合でも必ず不動産会社を通す必要がある契約形態です。不動産会社には1週間に1回以上の頻度で報告義務があります。

媒介契約と管理委託契約の違い

物件の「募集」と「管理」は別物です。単に入居者を募集するだけであれば媒介契約(口頭でも可)ですが、物件の管理業務(家賃集金、クレーム対応、退去立会いなど)を委託する場合は「賃貸借管理業務委任契約書」などの名称で書面による契約を結ぶのが一般的です。

維持管理業務の内容や管理費用等の詳細を明確にするため、この場合は書面での契約が強く推奨されます。

オーナーへのアドバイス

賃貸物件の募集に際して、以下のポイントを押さえておくことをお勧めします:

  1. 口頭での依頼が可能: 法的には口頭での媒介依頼でも問題ありません。

  2. 書面での契約がより安心: トラブル防止のためには、募集条件や報酬について書面で明確にしておくことが望ましいです。

  3. 信頼関係が基本: どのような形態であれ、口頭で伝えたことを通告なく変更するなどの行為は不動産会社からの信頼を失うため避けるべきです2

  4. 管理業務は書面で: 物件管理を依頼する場合は、業務範囲や費用を明確にするために書面での契約をお勧めします。

まとめ

賃貸物件の募集において媒介契約書は法的に必須ではありませんが、トラブル防止や条件の明確化のために書面での契約をお勧めします。とはいえ、多くの不動産会社では口頭でのご依頼も受け付けていますので、ご自身の状況や不動産会社との関係性に応じて判断されるとよいでしょう。

弊社では、オーナー様のご要望に応じて柔軟に対応し、安心して物件をお任せいただける環境づくりに努めております。賃貸物件の募集や管理に関するご質問がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。